こんなことを言うとスリランカの皆さんは怒るでしょう。そして決まって出てくるのは、「いい茶はみな、ヨーロッパとか外国へ行ってしまい、我々が飲めるのはダスト(クズ)なんです」と。なんとなく被害者っぽい言葉でその先の議論はできません。
紅茶研究所(TRI)のディレクターにお会いしたとき、ダストは本当に不味いのか質問しました。彼はダストだから不味いと言う訳ではありません、事実、紅茶のオークションでオレンジペコよりダストの方が高い値がつく場合がありますと。問題はグレードじゃなくて、味=品質なんですね。良く知らない人はオレンジペコだと言われて、美味しいものだと勘違しているかもしれませんね。
日本の生活では「このお茶、本当に美味しいですね」なんて会話をよくしますがスリランカではあまり耳にしません。こんなわけで、どこまで紅茶の味が分かっているのか素朴な疑問は残りますが、それはさておき、工場見学は次の工程へ移って行きます。前回は最初の処理、茶葉の水分を抜くウイザリング処理を見学しました。今回は2階のウイザリング槽で仕上がった茶葉が、ダクトを通り移動し、階下のローリングマシンに掛けられる話です。
前置きになりますが、実は工場見学は2日間に分かれてました。初日は夕方近くで工場の機械は全て停止中、静かな工場をじっくり見せて戴きました。そして、ディレクターが明日朝7時に来れば稼動中の工場内を見せてくれるというので翌朝またお邪魔しました。初日は若いバリバリの主任、翌朝はにこやかな50歳台の主任が案内してくれました。みなさまには二つの見学をミックスしてお送りします。
ローリング=揉捻といいますが、茶葉の葉を揉み潰して細胞内のエキスを葉の外に出す処理です。日本茶では伝統的な手揉みがあり、たまにテレビで見かけますね。
しかし、ここ製茶工場では機械揉みです。ローリング・マシンは大きな臼のような形、茶葉を詰め込んだ釜がうなりを挙げ楕円軌道で廻りながら、底のスリ板に茶葉を押し当てて揉みます。モーターも10~20馬力はありそうです。これが3台忙しく廻っていました。むき出しのアームに殴られそうで近寄のは危険です。日本だったら見学者は絶対入れない場所ですね。
ひと釜の茶葉が揉み上がると臼の下方からグチャグチャになった茶葉を台車に取り出し次の工程へ運びます。そしてローリング・マシンはまた新しい茶葉を供給し回り始めます。
開発途上国と言われながら、こんな立派な工場ときびきび働く労働者がいることを知って驚きました。聞けばここで使う電力は自家発電でまかなっているとのこと。イギリス資本と指導の下、疫病と闘いながら築いたとい紅茶産業は今も力強く活動を続けておりました。独立と共にイギリス人は去り、スリランカ人が引き継いだのです。
【写真上】案内の主任とローリング・マシン。
【写真下】ローリング・マシンのスリ板、ココナツの木を貼っています。
注意:紅茶研究所を見学される方は事前に許可を取る事をおすすめいたします。
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